大坪徹
事務所

COLUMN

コラム「楽天家を建てよう」

北海道のバーチャル住宅展示場WEBサイト「ままハウス」に2012年連載。

収載に際して、加筆修正を行っています。

秋色のわが家

Vol.10

秋色の我が家

今年は夏の暑さが長引いて、秋なんか来ないんじゃないかと思っていたけれど、ちゃんとやってきた。庭のツツジが今年も真っ赤に染まった。先日、草むしりをしていたら、一人のご婦人が通りかかって僕に声をかけてきた。「お宅のツツジは見事ですね。毎年秋になると赤くなるのを楽しみにしてるんですよ」。このご婦人は毎日、わが家の前を通って月寒公園へ散歩に出かけるらしい。「燃えるようですものねえ」とご婦人の言葉は続く。このツツジは、わが家の黒い外壁には紅葉する樹木が似合うだろうなあと思い、新築時に植えたものだった。僕は「そうですか?今年の夏は暑かったのであまり紅葉しないかと思ったんですけど…」とかなんとか言いながら、心の中で「やったね!」と叫んでいた。

わが家が暖房を入れたのは、このツツジが紅く染まりはじめた11月の初めだった。夜、テレビを観ていたら急にゾクゾクッときた。配偶者に「なんか、寒いよね」と訊くと「そうでもないけど」という。僕にとってゾクゾクッは風邪を引く兆候なのでヤバイと思い、暖房のスイッチを入れてもらった。夏に続いてこの冬も7%以上の節電要請が北電から発表され、省エネムードが高まっている。しっかり重ね着をして(その日も長袖のポロシャツに厚手のパーカーを羽織っていた)暖房を入れるのは本格的な冬が来てからと思っていたのだが、ゾクゾクッに負けてしまった。

わが家の暖房は「エコウィル」というコージェネレーションシステム。天然ガスで発電し、そのとき出る熱でお湯もつくり,暖房もできるようになっている。新築した6年前は、快適性、環境性、省エネ性、経済性に優れた先進のシステムだった。ちょっと高かったけれど、ほかに選択肢があまりなかったし、補助金も出たので思い切って採用することにした。

今では家庭用の省エネシステムが多彩に揃っている。排熱を再利用して給湯で約95%、暖房で約89%の熱効率を実現する潜熱回収型ガス給湯暖房熱源機「エコジョーズ」、空気の熱を利用してお湯を沸かすヒートポンプシステムを活用した電気給湯機「エコキュート」、灯油を使用した潜熱回収型給湯器「エコフィール」、都市ガス・LP ガス・灯油から水素を取り出して空気中の酸素と反応させて発電する家庭用燃料電池「エネファーム」などなど。どれもこれも似たような名前でややこしいが、太陽光発電や地中熱ヒートポンプシステムなども含め、エネルギー業界や住宅業界はかなり本気で低炭素社会を追求しているように思う。逆に言うと、消費者の省エネに対する意識の高まりがそうさせているとも言える。

これから家を建てようとしている方、リフォームを考えている方に、ちょっとアドバイス。省エネ住宅を考えるときは暖房・給湯システムの選択も大切だけれど、断熱性の高い構造や工法、節電につながる設備機器や電化製品を積極的に採用するなど、家全体で考えることが大切だと思う。わが家も電球が切れると、せっせとLEDに変更しております。

最近、家が広くなったなあと感じる。その理由はわかっている。この11月から娘が一人暮らしをするために家を出た。一緒に住んでいるとどうしても親に甘える部分があり、自分で生活することは彼女のためにもいいことだ。だからとくに反対もせず送り出したけれど、やはり一人抜けるとその後の家の中が妙にスカスカしているのだ。食卓がスカスカ、玄関の下足入れもスカスカ。庭のツツジが紅く染まりはじめた頃にゾクゾクッとしたのはそのせいだろうか。まさかね。秋が深まったせいだ、ぜったいに。

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