大坪徹
事務所

COLUMN

コラム「楽天家を建てよう」

北海道のバーチャル住宅展示場WEBサイト「ままハウス」に2012年連載。

収載に際して、加筆修正を行っています。

水難の相

Vol.8

台風後の望月寒川

大雨や台風の被害が、連日のようにニュースで報じられている。北海道も9月8日の夜から9日の夕方にかけて大雨となり、札幌市内では住宅や空き店舗など7棟が床上浸水し、11棟で床下浸水の被害が出たらしい。実はわが家の前を流れる望月寒川も9日の正午近くに川の水が道路に冠水した。水流が橋にぶつかって道路へと跳ね返り、付近に駐車している車のタイヤが半分ほど水に浸かった。近所の人が通報したけれどなかなか来てくれずヤキモキしたが、やがて雨脚も弱まり事なきを得た(水位が下がってから到着した警察と消防の人は「他にも要注意ポイントがあり、すぐには来られなかった」と釈明しておりました)。

この望月寒川は10年ほど前にも氾濫した。この時、土地が低い方のご近所は床下及び床上浸水したが、わが家はギリギリで免れた。しかし、わが家の「水難の相」はこの時から始まったと僕は思っている。それから数年後の秋、その日も午後から激しい雨が降っていた。夕方、妻から会社に電話がかかってきた。天井から水が河のように流れ落ちていると言う。「まさか」と思ったが、妻の狼狽した声を聞いてすぐに家へと向かった。

この家とは新築前の中古住宅のことである。家に到着すると確かに床は水びだしで、バケツやら鍋やらがところ狭しと並んでいる。河はお小水程度に弱まっていた。早速、屋根に上がってみると、V字型の無落雪屋根に雨水がプールのように溢れている。底にある溝の排水口に目をやると何やら白いものが…手を伸ばして取り出してみると、それはなんと、インスタントラーメンのカップ。これは一体どういう事なのか?

僕が想像するに、カラスがカップをくわえて屋根で遊んでいたが「なんかツマンナイや」と放り投げ、カップは屋根をコロコロと落ちて溝の排水口にホールインワン!やがて雨が振り出し、溝に溜まっていた泥がカップを埋め、それが重しとなってカップは水栓と化し、雨水は行き場を失って溢れ、溝と屋根の隙間から家の中へ。という大河ロマンのような話なのであった。そんなこんなで、6年前に中古の家を取り壊して建て替えたのだが、わが家の「水難の相」はさらに続くのである。

新築してから半年ほど経った頃のことだ。僕は2階の書斎に向かった。ふとデスクの上を見ると、小さな水たまりができている。昨日ウイスキーを飲んだ時に水をこぼしたのかな?と思ったが、それにしては量が多すぎる。ふと天井を見ると、ちょうど水たまりの真上が濡れているではないか。雨漏り?新築半年で?「まさか」と思いながら住宅メーカーに連絡して確かめてもらったところ、まさかの雨漏り。原因は屋根材の張り合わせに不具合があったということで部分的に張り替えてもらった。

ところがである。数ヶ月後にまた同じ部分から雨漏り。これには住宅メーカーも恐縮しきりで、屋根業者と一緒に来て(柳月の詰め合わせ付き)平謝り。結局、屋根業者のナンバーワン職人が行うという条件付きで、屋根を全面的に張り替えて貰った。これで一件落着!と思うでしょう。わが家の「水難の相」はこんなものではありませんぞ。

今度は暴風雨の日に1階のキッチンの天井からポタポタ。これは屋根の問題ではなく、2階のベランダで跳ね返った雨水が壁の隙間から入り…長くなるので原因については省略。もう笑うしかなく、実際に「今度会う時は<水入らず>でいきたいですねえ。ハッ、ハッ、ハッ」てな感じでしたね。

長々とわが家の「水難の相」について書いちゃったけど、こんなことがあっても、あまり腹が立たなかったんですよね。その理由のひとつは、住宅メーカーが誠心誠意の対応をしてくれたから。どんな家も大なり小なり不具合は起こるもの。その後のフォローが肝心なんだな。そして何よりも、自分も一緒に家を造ったという想いがあったからだと思う。これが建売だったら、ちょっと様子が違っていたかもしれないけど、一緒にプランを考え、材質や設備を選び、コスト削減のために頭をひねって建てた家。例えがおかしいかもしれないけれど、自分の子は出来の悪い部分も含めて愛せるというか、すべてに責任を持つというか。これからも「困ったヤツだ」と思いながらも、この家と一緒に暮らしていくんだろうなあ。

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