大坪徹
事務所

COLUMN

コラム「にほんご雑記帳」

ちょっと気になる日本語について、気まま思いのままに書きつづる雑記帳。全4話。

札幌で2012年から2014年に発⾏していたフリーマガジン「Madura(マドゥーラ)」に連載。

収載に際して、加筆修正を行っています。

偽り

Vol.3 

人の為と書いて「偽り」という。

先日、テレビを観ていたら、日本に留学している若い外国人女性が非常に興味深いことを言っていました。「日本語って奥があって素晴らしい。だって、人(他人)の為と書いて“偽(いつわ)り”と読むじゃないですか」。

「なるほど!」と感心し、語源を調べてみました。この漢字のつくりである「為」は「手」と「象」からできていて、人間が象を手なずける様子を表しています。そこに人偏が付いて人間の作為で本来の姿を変える、うわべをとりつくろうという意味の字ができ、「偽り」になったとされています。

テレビの外国人女性は「偽り」が伴う言動は自分の為ではく、他人の為になされるものなのだ、この字はその真理を突いていると。確かに、相手をおもんばかって、あえて「偽り」を語ることってあります。ただし、よく「あなたの為を思って」とか聞きますけど、そういうことをわざわざ言う人に限って「自分の為」だったりするんじゃないかと…。この場合は人の為じゃないから「偽り」にならない?いや、ある意味、偽りでしょ?なんか、ややこしくなっちゃいました。

« »

コラムの一覧へ

トップページへ