大坪徹
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COLUMN

コラム「にほんご雑記帳」

ちょっと気になる日本語について、気まま思いのままに書きつづる雑記帳。全4話。

札幌で2012年から2014年に発⾏していたフリーマガジン「Madura(マドゥーラ)」に連載。

収載に際して、加筆修正を行っています。

横紙破り

Vol.4 

君の意見はあまりにも横紙破りだよ。

横紙破り、「よこがみやぶり」と読みます。意味は『無理を知っていて、自分の言い分を押し通そうとすること』です。型破りとか、掟破りとか、常識の範囲や決まり事から逸脱する場合に「破り」という言葉を使いますが、横紙とはどんな紙なのでしょう?これは和紙のこと。和紙はすき目(繊維の方向)が縦に通っていて横には破りにくい。それを無理に破るようなもの、というたとえなんですね。

あまり耳にしなくなった言葉ですが、『横紙破りの前科者』という邦画がありました。これは若山富三郎主演(中村玉緒が遊女役で共演)で、1968年に製作されたアクション映画。娯楽映画のタイトルに難しい言葉を使うとは思えないので、この頃は常用語だったのかもしれません。

今どきの若者言葉で言うなら「それって、無理っぽい」かな。断定を避けて協調性を乱さない言い方が氾濫しているけれど、「横紙破り」の強さが心地よく感じるのは私だけでしょうか。

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