大坪徹
事務所

COLUMN

コラム「住み手の大声小声」

北海道の住宅業界事情に精通した専門紙「北海道住宅通信」に、2023年6月号から2024年5月号まで掲載。

能登半島地震で思ったこと

新しい年を迎えて、最初のコラム。前向きで明るい内容をお届けするつもりでしたが、能登半島地震に触れないわけにはいきません。元日の夕方近く、僕はビール片手にサッカー日本代表の国際親善試合をテレビ観戦していました。日本代表の快勝に家族と乾杯していたら突然、地震緊急速報。画面に釘付けになりました。大津波警報が発令され、大規模火災が発生。次第に家屋倒壊や地割れの現場が映し出され、震度7という自然の猛威を見せつけられました。

過去に起きた大震災を思い出さずにはいられません。特に家屋倒壊が原因で甚大な被害が出た1995年の阪神・淡路大震災。今回、被災地の映像を観ていて、「あの時と似ている」と思ったのは僕だけではないと思います。住宅が傾いていたり、1階や2階が押しつぶされて屋根だけが残された無惨な光景。家族を守るはずの住宅が、またしても「凶器」になったのです。

世界の中でも有数の地震大国と言われている日本。これまで大地震が起きるたびに、住宅の耐震対策が強化されてきました。81年に建築基準法が改正される契機となったのは、78年に発生した宮城県沖地震。一般的にこれ以降を「新耐震基準」、それ以前を「旧耐震基準」と呼ばれているのは皆さんもご存じの通り。阪神・淡路大震災においては、5年後の2000年に建築基準法が改正され、壁のバランス、金物の強度などが規定されました。

能登半島地震の家屋倒壊については、古い住宅における耐震化の遅れが指摘されています。高齢者が多く、改修にかかる費用負担が足かせになっているようです。今回の震災を機に新たな法改正を行うのであれば、耐震改修の促進に向けて補助金の大幅な拡充を図るべきではないでしょうか。新耐震基準以降の住宅は、それなりの耐震強度が保たれているはず。地震に弱い住宅をどれだけ多く補強できるかが、大地震の被害規模を最小限に抑える決め手になると思うのです。

被災状況を伝えるニュースを観ていて、人ごとではないと思える映像がありました。がけ崩れで数軒の住宅が倒壊していました。いわゆる土砂災害。実は、わが家は札幌市が指定する土砂災害警戒区域(=写真)に隣接しているのです。27年前に公園に近い住環境が気に入って購入したのですが、土砂災害のことなど気にも留めていませんでした。知ったのは、18年に「札幌市地図情報サービス」が公開された時。「ありゃまあ!」てな感じでした。この「ありゃまあ!」には、かなり諦めの気持ちが含まれています。

土砂災害の対策としてはRC造の塀を設けるという方法があるのですが、わが家にはがけ側にそのスペースがありません。やれることをやるしかないので、地震や台風のたびに、がけにひび割れができていないか、樹木が傾いていないかなど、前兆現象をチェックするようにしています。前兆があれば、近所に声をかけて即避難することを肝に銘じています。  今回の能登半島地震では、多くの方々がお亡くなりました。心からご冥福をお祈りします。被災された方々には、一日も早く笑顔を取り戻せる日が来ることを心から願っています。

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