大坪徹
事務所

COLUMN

コラム「にほんご雑記帳」

ちょっと気になる日本語について、気まま思いのままに書きつづる雑記帳。全4話。

札幌で2012年から2014年に発⾏していたフリーマガジン「Madura(マドゥーラ)」に連載。

収載に際して、加筆修正を行っています。

風花

Vol.1

風花が ひとひら ふたひら 君の髪に舞い降りて~♪

このフレーズは、シンガーソングライター・さだまさしさんの「晩鐘」の出だしです。1977(昭和52)年に発売されたアルバム「風見鶏」の最後に収録された楽曲。ちょっとマニアックな部類に入りますが、マドゥーラ世代なら聴き覚えのある方も多いのではないでしょうか。

この「風花(かざはな)」というのは、晴れているのに風に舞うようにひらひらと舞い降りてくる雪片のこと。遠くの山が風雪になっているとき、雪片が風に乗って山を越えて麓に飛んでくることがあり、静岡県や群馬県でよく見られるそうです。北海道でも日本海側で降っていた雪が、強い西風に乗って日高山脈を越え、十勝晴れのところへ舞い降りることがあります。風向きによっては、手稲山を越えた風花が札幌でも見られます。

「風花」は冬の季語にもなっていますが、字面といい音の響きといい、とても美しい言葉ですね。風に舞う雪を花にたとえる日本人の感性を誇らしく思うし、その美しい言葉を使って、話したり、聞いたり、書いたり、読んだりできる私たちはなんて幸せなんでしょう。

ちなみに、さだまさしさんの楽曲は美しい日本語の宝庫。この「晩鐘」の歌詞の中にも、風花のほかに浮浪雲、桐一葉などといった、琴線に触れる言葉が連なっています。楽曲を聴いたり歌ったりもいいのですが、一度、歌詞を作品として読んでみるのも楽しいかもしれません。

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